木目に寄り添って
どうも、gaucheです。
オンライン授業の弊害である課題の供給過多に苦しんでおります。
欲しい文献は手に入らず、行ったら誰かがいる研究室も立ち入り禁止、文章が苦手な私はチャットで質問するのも一苦労。
本日も徹夜コースです。以上、捌け口のない愚痴です。
さて、レポートや論文の山、峠を越えたところで、前回の取材のレポートです。
前回と言っても6月の22日ですがお許しください。
長くなってしまったので前後半に分けさせていただきます。
後編は後日の更新をお待ちください。
行って参りましたのは、滋賀県大津市の 中川木工芸 比良工房さん。
現代的なデザインで伝統を表現する木桶が有名です。
主宰の中川周士さんと数名のスタッフさんにお話を伺うことができました。
中川さんのお祖父さまからはじまった中川木工芸さん、お父さまの工房が京都にあり、滋賀で独立し中川さんの比良工房となりました。
滋賀にした理由は、大学在学中のワンダーフォーゲル部で登った山がある土地であり、非常に自然が豊かということ。
訪れて分かりましたが、工房周辺は微かな琵琶湖の波の音と、木々のみずみずしい香りがします。
比良工房さんの顧客はほとんどが料理屋や旅館。「おもてなしの器」として使われており、現在は小売店に卸すことはあまりしないそう。それには需要減少の背景が。
初代のお祖父さまが丁稚奉公を始めた際、もともと京都市内には250もの桶屋があったそう。しかし現在は4件。
昭和初期には、生まれたらタライで洗われて、死ぬときは棺桶(当時は土葬)といったように、ライフスタイルに木桶の居場所がありましたが、現在はお墓参りで少し使用する程度になりました。
そこで、デザインと技術の融合、新たな価値創造に目を向けます。
中川さんは、大学時代に現代美術を専攻していたため、家業の伝統工芸との全く異なった視点を持っており、それを生かしたのが現在の比良公房さんのスタイリッシュな木桶。
そしてデザインと伝統の掛け合わせが海外でも評価され、売り上げの20~30%は海外の需要なのだとか。展覧会にも積極的に出品しており、デザイナーとのコラボレーションも度々行うのだそうです。
お話の中で非常に興味深い内容がありました。
現代社会での木工芸の価値は、いかに貴重な木材であるかということに重きを置いており、人工林から作り出された製品と、樹齢500年の天然木の一枚板で出来た製品では、100倍ほど違いがあるだろう。ということ。
言われてみればそう感じます。
珍しいもの、稀なものに私たちは興味を示し、それが新しくなくなった瞬間、価値を消費します。
しかし、木材で言えば人工林のように、人間との関わりの中でサイクルができているもの、人が育んでいる価値を天然木と同等まで持って行きたい、と中川さんは語ります。
工芸も同じようなもの。何代にも渡ってものづくりを探求する、そしてそれを循環するシステムが今後の社会に必要なのだと。
そして中川さんは行動に移します。
滋賀の木を使うという取り組み、技術を身に着けて自分でものづくりを始める若いスタッフの育成、技術のシェアなど、少し無理をしてでも桶のことを人に広げるために。
そうして桶の作り手が増えること、それが希望だとおっしゃっていました。
後編は工房の見学編となります。
閲覧ありがとうございました。